ヒザイミズキの、日々の旅 ブログ編

(元)俳優、ヒザイミズキの日々は旅のように。

面白い演劇をやってればお客さんが来るって本当ですか?

私は俳優として、演劇を創っている。毎月、お客様の前で演劇を上演している。
と同時に、私は劇団員として、企画を立てたり運営したり宣伝したり、制作周りの諸々もやっている。

この2つの立場と行為は、最終的には同じ「たくさんのお客様に、なんかスゲー観劇体験をしてもらう」というゴールに向かっている。はずだ。
けれども、「なんかスゲー作品をつくる努力」「たくさんのお客様に来ていただく努力」は、まあ無関係ではないけれど、両立するのが結構大変だ。
これは、演劇が「出来上がってから宣伝して売る」ものではなく、多くの場合「売ったあとにできあがる」商品だから、というのも一つの理由。
再演だとしても、いま時間堂で試みているようなレパートリー作品だとしても、有る程度は保証できるけれども「売りながら創り、売った後に(お客様の前で)完成する」という順番は同じだと思う。

先日あるへヴィーなミーティングをして、その創作努力と集客努力の間のさまざま意見を交換した。
その中で「制作チームは創作チームのことを信じて売るしかない。それが仕事だ」という意見と、「創作が圧倒的であれば集客もしやすいし、そもそも客席がガラガラにはならないんじゃないか」という意見があった。どちらも制作者の意見。

私は創作側でもあるので、「いやーあはは、まあね、信じて売ってくださいよ。こちらは良い仕事しますから」としか言えない。
その、「良い仕事」を毎回毎月、コンスタントにし続けているというプライドがあるのである。もちろん回によって不調やアクシデントが無いわけじゃないが、それでも、コンスタントに質の良い仕事をしている、と、思っているのである。客席に来てくれたお客様に対して、覚悟と責任を負っているのである。

…膠着状態


…というところで、
「作品が圧倒的であれば自然と客席が埋まる」っていう仮説は本当なのか?
リピーターが出るのはわかる。実際に「じゃ次も見てみよう」って人は毎回いるし、「よほどの用事が無い限り毎回来よう」という素敵な方々もいる。
でも、そもそも母数が少ない場合は?20人のお客様に見せて、10人の方が感激して涙したとして、そのまま待ってれば客席は100人500人になるのか?

「じゃ次も見てみよう」という人は「次がいつか分からなければ(お知らせが無ければ)来ない」だったりするし、「よほどの用事が無い限り毎回来よう」という人は「用事が重なっちゃったらしばらく来れない」でもあるわけで。

つまり、「面白い演劇をコンスタントに創る」だけじゃなくて、「一度来た人や興味を持ってくれた人に、毎回情報が届くような仕組み」「そもそもまったく公演の存在を知らない人に、知ってもらう、興味をもってもらう仕組み」があって初めて、持続可能な集客ができるんじゃないだろうか。


…あたりまえ、ですか?
あたりまえなこと、できますか?
「人手がなくてできない」という人は、本当に人手があったらできますか?
あたりまえ=簡単、ではない。
私には難しいです。


あのう、面白い演劇をやってればお客さんが来るって本当ですか?

写真は保坂萌様に撮影していただいたばかりの宣材、お気に入りのカット。

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【ヒザイミズキ 出演予定】
・2016/4/15(金)16(土) [http://jikando.com/2015-10-26-05-27-33/552-rpt4.html:title=時間堂レパートリーシアター4月
『人の気も知らないで』]
作:横山拓也(iaku)演出:黒澤世莉
・2016/7/29-31は東京芸術劇場シアターウエストに初登場
時間堂 シリーズ発掘02『ゾーヤ・ペーリツのアパート』