ヒザイミズキの、日々の旅 ブログ編

(元)俳優、ヒザイミズキの日々は旅のように。

【父を送る】2、命がゴールした日

6月26日(金)

***

夜が明けた
いったん帰宅したけど必ず夜中に連絡が来るはず、その時に息子が起きてしまうと泣いて大変だろうとリビングで携帯持って夜通し待機していたけれど・・・、まぁなんともしぶとくて笑ってしまう
午前も音沙汰なく 実家でPCとアルバムをひっくり返し、なんか葬儀の時にメモリアルボード?みたいなのを作りたいという母の希望で100均で買い物して制作
15時頃 、全然電話来ないしーうちにある写真を取りに一度帰ろうかなーとリュックをしょった瞬間に電話
梅雨の晴れ間の蒸し暑さのなか母と自転車爆走

姉も職場から駆けつけて
3人で父を囲んでいつもみたいに軽口をワイワイガヤガヤ
テキトーなこと言い合ってるうちに
心拍は40から18になり0になったかと思えばまた17になり、かろうじて電気の小さな波をピヨン・・・ピヨン・・・と出しながら、しばらくゼロが続きつつ
16:16死亡確認

私たち家族が揃って、ふむ、そろそろお別れできてるなぁっていう頃合いをお医者さんは見てくれたらしい(←死亡確認した医者に「しばらく状態が変わってないのになんで今なんですか」って聞いた人)
人工的な自然の死

父ちゃんよ、本当にお疲れ様!!

ラソンランナー(父)の最後のゴールに並走するような清清しい気持ち

***


...と、ここまでは良かった
あわただしく葬儀の準備
地下の霊安室で再会した父は数十分前とは全然ちがう
管とかいろいろを外しただけなのに 父じゃないみたい

線香なんか焚かれちゃって ちーーーん、なんて鳴らされちゃって
別人?もの?


翌日通夜になったので時間がなくて焦りイライラを隠せない葬儀屋
なんかイメージしてた 落ち着いて畏まった感じじゃないのね
医学から急に仏教の世界に連れていかれて違和感
棺が花が料理がマイクロバスがお心付けがお団子手作りしろとか云々かんぬん、わー!

やっと帰って夕飯食べ損ね一人でチューハイ。
なん十年間も、あんなにあんなに溺れていたお酒を必死にやめた父は、死ぬ前に一度飲みたいなぁとか、思っていただろうか。

あんなものはもう要らないと思っていただろうか。
本当に本当のところは、分からない。

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昼間制作していたメモリアルボード?みたいなのの途中。

葬式は限りなく結婚式に似ている。

【父を送る】1、前日回顧

6月25日(木)

 

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わたしは父に似ている
四角い顔、ギョロっとした眼、短い手足、乱視がひどくてアレルギー性鼻炎
怠け者で偏屈、勉強ができて運動は苦手、文化やエンタメが好きで多趣味で飽きっぽい
最近はおどけた時の表情が自分でも引くくらいよく似てる

私はお父ちゃん子だった
母はしっかりものでエネルギッシュで愛情深かったけど、ずぼらでマンガ好きの父と出かけるのが好きだった
映画館でジャッキー・チェンの映画を見たりミスドでドーナッツ食べながらマンガ読んだりするのが好きだった
父の本棚には萩尾望都藤子不二雄ますむらひろしの漫画がたくさんあって、こっそり読んでは漫画家への憧れを募らせた

父には一度しか怒られたことがない
小学生の頃、他の子のことを、塾で一番下のBクラスだから、と言った時
そうやって他人を馬鹿にする子はいくら勉強ができても全然偉くない、というような感じで怒られた
私は当時運動ができなくて学校でさんざん馬鹿にされてるのに、勉強ができなくて馬鹿にするのはいけないのか、とすごく悔しくて泣いた
もちろんわかってる

父は病気のデパートだった
若い頃から糖尿病でアルコール依存症だった
当然高血圧だし眼も悪くなったし肝臓も胆管も肺も悪かった
救急車に4回運ばれたし何度も入院した

父は6年前に死にかけた
心筋梗塞で意識が何日も戻らず、医者の感触も正直もうダメそうな感じだった
看護師でもある叔母は もう延命治療しない方がいいんじゃないかと言ったくらいだった
でも(本当にいろいろあったけど)復活した
その年の9月に私は男児を出産した
いま、じーじと5歳の息子はとても仲良しだ
図書館で絵本をたくさん読んでくれるし、トランプやカルタや屋上菜園で遊んでくれる
じーじが挿し木で分けてくれたミニトマトはいま、うちのベランダでどんどん成長している

一度死にかけたあとは、一生無理かと思ってた断酒を成功させ、おかげで酔って母にあたることもなく穏やかな性格になった
ここ2年くらいはめっきり元気で、ボウリングに落語に源氏物語の勉強会に断酒会と、ウキウキと出かけては帰ってきてから家族にウンチクをたれていた


今年3月から、コロナのアレで、ハイリスクの権化である父とは会わないようにした
息子は会いたがったけどzoomやSkypeにした
6月は父の誕生日 70歳の古稀祝い
自粛もそろそろ良いだろうと思って姉一家も含めて集合してお祝いした
もし あのまま会わないように(会わせないように)していたら。
もし 倒れる2日前に「サツマイモ植えるけど来ない?」って言われたとき断っていたら。
病院に向かう間中、頭の中をぐるぐるとまわった

古稀でプレゼントした名入れのタンブラー 最初聞いたときは要らないって言ってたけど実際はとても気に入ったようで これは良い、冷たいものが冷たいままだ、結露しなくて便利だ、と、最期の2週間毎日愛用してくれた
倒れたそのときも、母によると、そのタンブラーに麦茶を注いで、冷蔵庫から氷を取ろうとしたところだったんじゃないか、とのこと
その最期の麦茶は、母が冷蔵庫に取っておいて翌日大事に飲んだ

***
これを病院で書いているいま、父はまだ死んでない
脳がほとんど死んでいて呼吸は人工なので、何をもって生きてると言うのかという定義によるけど、要は徐々に心臓が止まるのを待っているという不思議な時間だ

父は私の半神なんじゃないかと、思えてくる
小さくなって死にゆく半神を、(まだ比較的)ツヤツヤの私が見ている

医師に 何時かは分からないが、明日までは確実にもたないだろうと言われた今日が 終わろうとしている
人は簡単に死ぬし、そう簡単に死なない

 

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ER待合室の窓からはスカイツリー

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倒れる二日前に父と息子(孫)で植えたサツマイモ。

【ご報告】父を送りました。

去る6月26日、実父が脳梗塞のため他界しました。
今月でちょうど満70歳、家族に囲まれお祝いをしたばかりでした。

倒れた当日の6月23日も、母によると、元気にでかけて「たっだいま~」と元気に帰ってきて、麦茶を飲もうとしたところで急に倒れたとのこと。

それから救急車で運ばれ息を引き取るまで、できる限りの治療をしていただきましたが、一度も意識が戻ることはありませんでした。

わたしは、本人が痛みや苦しみや死の恐怖と戦う時間が無かったのは、幸運なことだったのではないかと(今は)思っています。
土日に身内で葬儀を執り行いました。お世話になった方に直接ご連絡せず申し訳ありません。こちらのブログで綴っていこうと思います。

***

倒れる2週間前、70歳の古稀祝いでケーキを囲んで挨拶する父が
人間万事塞翁が馬って言ってね...」
と始めて、要は「最近買ったばかりのiPodを落として電源がつかなくなったけど次の日になぜか直ったという話をしようとするんだけど、
周りで姪10歳が「タブレットを落とすなと注意していたパパが自分で落とした話を大声でし始めて、
私がケーキを切り分けながら「うちの冷蔵庫壊れたけど修理の依頼したら直った話をしたり、
息子5歳はケーキの切り分けばかり気にしてたりして、結局グダグダになるっていう1分半くらいの動画がありまして。
そのあとに起こることを誰も(撮っている母を含めて)まったく予感していないという、今見ると、台詞も演出も全てが最高に美しいラストシーンに仕上がっているのです。

いつか、みんなのセリフを書き起こしてみようと思っています。

(カテゴリ続く)
 

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古希祝いのケーキ。

 

家にいる日々で気づいたこと

滅多にかかないブログでこんにちは。
3月頃からのコロナ騒動でてんやわんや、様々な影響を受けているし、こういうときって平常時に隠されていた本質的なズレ、歪み、欺瞞、そういったものがドバっとオモテに溢れ出てきてたいへんなことになったり、逆にああ自分の選択は間違ってなかったんだなとわかったり、するよね。

こうして自分に具体的に何があったかを書かずに誤魔化していますが、書けることとしては4月13日くらいから主に在宅勤務をしています。週に1回くらい出勤。保育園は臨時休園のため自宅保育。
とにかく、こんなに四六時中家族3人でいたことは今までなかった。
という生活を強制的にしてみて感じてるのは、
会社に行くのって週に1回くらいが丁度良い(私にとっては)ってこと。ご飯作ってご飯食べて散歩して草花や虫を観察して季節を感じて。それらが生活の中心になるくらいがいい。物置になってた部屋も使えるように片付けた。嬉しい。

あと、意外だったこと。
ここ1年くらいで服の趣味や似合う服が変わって、今までの服があまりぴったりこなくなった(サイズじゃなくてよ)、と感じていたのが、毎日家にいると、日を追う毎にかつての私の服装に戻っていくのがわかってびっくりした。
あまり着なくなっていたカラフルな服、ゆるっとした服、ワンピース。会社に着ていけない服たち。「40過ぎたら変わるもんだな」とか思っていたけど、変わったのは私ではなくTPOだった。

いまおすすめの本はこちら。
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今まで視界に入ってても気づいていなかった植物たちがどんどん見えてくる、魔法のような本。

いつもげんきでいるように

なんと、今年の初ブログでしたか。あっぱれ。
冷たい雪とみぞれ、そして桜の開花とコロナウィルスのなか、41歳になりました。
冷たい雨が降ることが多い私の誕生日。土曜日だけどコロナで予定がキャンセルになったし夫は仕事だしで、家で息子とビデオ見たり折り紙したりカルタしたり宝探ししたりご飯作ったりして退屈しながら低空飛行で過ごしました。唯一の外出は、夫が帰宅してから一人でまいばすけっとに行ったこと笑。

でも。
息子5歳から手紙とハッピーバースデーの歌のプレゼントで一気にハッピーなバースデー。

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ままはっぴぃ♥ いつもげんきでいるように いつもかぜをひかないように★
まま いままででいちばんかわいいよ おたんじょうびおめでとう

健康第一、そして自分のやりたいこと、わくわくすることへの嗅覚を鈍らせず、視野を広くもって暮らしていきたいと思います。